高1・高2の相談で最も多いのが「医学部志望なら、今から医療系の英単語をやるべきですか」という質問です。答えは不要です。医学部の長文では専門用語に語注が付く大学が多く、注が付かない周辺語も高3の1年で十分間に合います。低学年でやるべきなのは逆のもの、つまり直前期にどれだけ時間をかけても動かないものです。読解速度、基礎語彙の量、文法の自動化、音を伴った処理。これらは数ヶ月から数年かかります。共通テスト後の1ヶ月で読解速度が上がることはありません。言い換えると、高1・高2の設計は「高3で間に合うものに時間を使わない」ことで決まります。本記事は、その切り分けと学年別の到達目標を整理します。
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動くものと動かないものを分ける

この切り分けが結論のすべてです。
直前期に動かないもの(低学年でやる)
読解速度。1分あたり何語読めるかは、数ヶ月から数年かけて上がります。
基礎語彙の量。3000語から4000語の土台は、毎日の積み上げでしか作れません。
文法の自動化。知識として知っていることと、読みながら瞬時に構造が取れることは別です。後者には時間がかかります。
音を伴った処理。リスニングと音読は、間を空けると落ちます。習慣として持っているかどうかで差がつきます。
直前期でも動くもの(高3でよい)
志望校の形式対策。記述の書き方、英作文のテンプレート、設問の処理順。土台があれば数週間で乗ります。
医系語彙。多くの大学で専門用語には語注が付きます。
時間配分と捨てる判断。過去問を解きながら決めるものです。
過去問。高1で解いても、形式が変わる可能性があり、力も足りず、自信を失うだけです。
医学部志望でも特別なことは要らない
医学部志望であることを理由に、特別なことを始める必要はありません。
むしろ普通の英語学習を、普通より深くやることが医学部への最短ルートです。違うのは深さと、始める時期だけです。
Gou高1で医療英単語帳を買ってきた生徒がいました。悪いことではありませんが、優先順位は最下位です。使う場面が来る前に忘れます。




読解速度は80語/分を通過点にする
低学年で作る土台のうち、最も時間がかかるのが読解速度です。
水準の目安
| 速度 | 位置づけ |
|---|---|
| 100語/分以上 | 相当速い。難関大の長文でも余裕がある |
| 80から100語/分 | 医学部の長文に対応できる水準 |
| 60から80語/分 | 標準的。語数が多い大学ではやや厳しい |
| 60語/分未満 | 語数の多い大学では時間が足りなくなる |
医学部の長文は300語から1000語超まで3倍以上の幅があります。語数が多い大学を受ける可能性を残すなら、80語/分は通過点だと考えてください。
現在地の測り方
英文を1本用意し、時間を計って読みます。読み終わったら、語数を所要時間で割ります。600語を10分で読んだなら60語/分です。
測るのは月1回で十分です。毎回測ると数字を気にしすぎて、雑に読む癖がつきます。
速度だけを追わないでください。理解が曖昧なまま速くなっても意味がありません。
速度が上がらない4つの原因
語彙不足で止まっている。返り読みの癖で後ろから戻っている。構文把握が弱く修飾関係が瞬時に取れない。集中が続かず後半で落ちる。
自分がどれかを見極めてください。原因によって手当てが変わります。


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学年別の到達目標


数字で置いておくと、迷いが減ります。
高1の終わりまで
文法を一周させます。網羅系の分厚い問題集は要りません。標準的な1冊で足ります。
基礎語彙2000語。単語帳の1冊目を終える位置です。
長文は週1本。速度は測らなくてかまいません。英文に触れ続けることが目的です。
音読を習慣にします。1日10分でいいので、毎日やってください。
高2の夏まで
読解速度を測り始めます。60語/分を通過点にしてください。
長文を週2本に増やし、うち1本は時間を計ります。
文法は一周目で曖昧だった単元だけを潰します。全部やり直す必要はありません。
高2の終わりまで
読解速度80語/分。ここに届いていれば、高3で志望校の形式に入れます。
語彙4000語。単語帳の2冊目、または上位版を終える位置です。
英検準1級を狙える位置に入ります。
高3の春から
ここで初めて志望校の形式に入ります。土台があれば、形式は数週間で乗ります。
逆に土台がないまま形式対策に入ると、形式は身についても点が伸びません。




高1・高2でやらなくていい4つ
不安になると手を出したくなるものを、先に外しておきます。
1. 医系語彙
多くの大学で専門用語には語注が付きます。注が付かない周辺語(symptom、chronic、infection、treatment、diagnosis など)も、高3の1年で十分間に合います。
低学年で覚えても、使う場面が来る前に忘れます。
2. 志望校の過去問
形式が変わる可能性があります。力も足りません。解いても自信を失うだけです。
3. 志望校の決定
高1・高2で志望校を1つに決める必要はありません。
知っておくべきなのは「形式の幅」だけです。医学部英語には、全問マークシートの大学から全問記述の大学まであり、長文が300語の大学から1000語超の大学まであります。この幅を知っていれば、土台を作る方向がぶれません。
4. 時間配分と捨てる判断
過去問を解きながら決めるものです。低学年では材料がありません。
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低学年の文法は、学校の進度と自分の進度がずれがちです。必要な単元だけを先に見て進められる教材は、一周目を早く終わらせたい時期に向いています。
英検の先取りは低学年の特権
高3では時間が取れない
高3になると、英検の対策に時間を割く余裕がなくなります。二次試験の対策で手一杯になるからです。
一方、高1・高2は時間があります。そして英検の学習内容は、そのまま大学入試の土台になります。無駄になりません。
使い道がある
大学によっては、外部検定のスコアが出願要件や加点の対象になります。高2までに取っておけば、高3の選択肢が広がります。
ただし制度は大学ごとに違い、年度でも変わります。使えるかどうかは志望校の募集要項で確認してください。
目標の置き方
高1の終わりに2級を通過。高2の夏に準1級へ挑戦を始める。高2の終わりに準1級を取得。
準1級の語彙レベルは大学入試の上位層と重なります。医学部志望なら、ここを目標にして損はありません。




保護者の方へ
見るべき指標は3つ
模試の偏差値より、次の3つを見てください。
読解速度が上がっているか。月1回の測定値を記録しておけば分かります。
単語帳が進んでいるか。冊数ではなく、1冊の反復回数です。
音読が続いているか。習慣が切れていないか。
低学年の1年で偏差値は大きく動きません。動いているのはこの3つの方です。
言わない方がいいこと
「医学部志望なら医療英語をやらないと」。不要です。むしろ遠回りになります。
「もう過去問をやったら」。低学年では材料が足りません。
「〇〇君はもう準1級を持っている」。他人との比較は速度を上げません。
環境の判断
高1・高2の段階で予備校が必要かどうかは、次の3つで判断してください。
情報を自分で取れるか。判断を自分で下せるか。継続の仕組みを作れるか。
3つが揃っているなら、低学年のうちは自習で十分です。欠けているなら、早い段階で環境を整える方が結果は出ます。高3になってから整えるより、低学年の方が立て直す時間があります。



保護者の方には「偏差値を聞かないでください」とお願いすることがあります。代わりに「今月の音読は続いた?」と聞いてもらう。この方が効きます。




AIで低学年の学習を回す
低学年こそAIが効きます。演習量と素材を自分で用意できるからです。
学年に合った英文を作らせる
「高校2年生が読む想定で、英文を400語程度で作ってください。テーマは科学か社会にしてください。使う語彙は英検2級レベルまでとし、それを超える語には注を付けてください。そのあとに内容一致問題を3問付けてください」
レベルを指定しないと、AIは難しすぎる英文を作ります。
文法の穴を単元別に特定させる
「以下は私が文法問題集で間違えた問題のリストです。間違いを単元別に分類し、最も弱い単元を3つ挙げてください。そのうえで、その3単元だけを復習する順番を提案してください」
全単元をやり直させないのが要点です。
高3までの計画を作らせる
「私は高校2年生で、現在の読解速度は◯語/分、単語帳は◯冊目の◯割まで進んでいます。英語に週◯時間を使えます。高3の春までに読解速度80語/分と語彙4000語に到達する計画を、月単位で作ってください。医系語彙と過去問は含めないでください」
最後の一文を入れないと、AIは医学部志望と聞いて医療英語を提案してきます。


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低学年で環境を整えるか迷ったとき、最終形を見ておくと基準ができます。全寮制・完全個別カリキュラムは、情報と判断と継続を外から供給する仕組みの極端な例です。
まとめ
医学部志望の高1・高2がやるべきなのは、直前期に動かないものだけです。
押さえるべきことは4つです。
第一に、動くものと動かないものを分けること。読解速度、基礎語彙の量、文法の自動化、音を伴った処理は数ヶ月から数年かかります。志望校の形式対策、医系語彙、時間配分、過去問は高3で間に合います。高3で間に合うものに、今の時間を使わないでください。
第二に、読解速度80語/分を通過点にすること。医学部の長文は300語から1000語超まで幅があり、80から100語/分が対応できる水準です。測るのは月1回で十分で、理解の手応えも一緒に記録してください。
第三に、学年別の到達目標を数字で持つこと。高1の終わりに文法一周と語彙2000語、高2の夏に60語/分、高2の終わりに80語/分と語彙4000語。高3の春から志望校の形式に入ります。土台があれば形式は数週間で乗ります。
第四に、やらなくていいことを決めておくこと。医系語彙、志望校の過去問、志望校の決定、時間配分。この4つは低学年では不要です。医学部志望であることを理由に特別なことを始める必要はありません。普通の英語学習を、普通より深くやってください。
まずは英文を1本、時間を計って読んでみてください。自分の現在地が分かります。
入試制度や外部検定の扱いは年度によって変わります。出願要件や加点の可否は、必ず志望校の最新の募集要項で確認してください。


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