医学部を目指すと決めた受験生の多くが、まず医療系の英文を読み始めます。医系単語帳を買い、医療トピックの長文問題集に手を伸ばす。ところが志望校によっては、その努力がほとんど得点に結びつきません。国公立医学部の英語は、他学部の受験生とまったく同じ問題を解く大学が少なくないからです。そういう大学では医療テーマがほぼ出ません。逆に、単科の医科大学では英語も医療一色になります。同じ「医学部の英語」という言葉の中に、性質のまるで違う試験が同居しているのです。本記事は、志望校がどちらなのかを見分ける方法と、タイプごとの戦い方を整理します。
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医学部の英語は3タイプに分かれます

まず全体像です。志望校の英語は、次の3つのどれかに入ります。
| タイプ | 誰と同じ問題を解くか | 医療テーマ | 目標得点率の目安 |
|---|---|---|---|
| 全学部共通型 | 工学部・理学部などの受験生と同じ | ほぼ出ない大学が多い | 高い(8割前後) |
| 医学科独自型 | 医学科の受験生だけ | 出やすい | 低め(6割から7割) |
| 混在型 | 大問によって変わる | 独自の大問にだけ出る | 大問ごとに変わる |
この分類は、赤本の目次にも予備校のパンフレットにも書かれていません。しかし対策の中身は、この1点でかなり変わります。
なぜ目標得点率が変わるのか
全学部共通型の問題は、医学科だけを想定して作られていません。他学部の合格ラインでも解ける難易度に設計されます。結果として、問題そのものは標準的です。
しかし医学科の合格ラインは他学部より高い。標準的な問題で高い点を要求されるということは、難問が解けるかどうかではなく、取りこぼさないかどうかで決まる試験だということです。
医学科独自型は逆です。医療テーマの長文や重い記述が課され、難易度が上がります。その代わり合格ラインは下がります。満点は要りません。
Gou「医学部志望だから医系単語帳を1冊やっておきます」と言う生徒に志望校を聞くと、医療テーマがほとんど出ない大学だった、ということが毎年あります。単語帳を始める前に、志望校のタイプを確認してください。5分で終わります。
全学部共通型は「取りこぼしが命取り」
国公立の総合大学では、英語を全学部共通問題で実施する大学が多くあります。私が記事にした範囲でも、北海道大学、千葉大学、新潟大学、広島大学、山形大学、鳥取大学、京都大学、大阪大学、神戸大学が該当します。
医療テーマの優先度が下がります
鳥取大学の英語は他学部との共通問題で、医療テーマはほぼ出ないとされています。社会系や文科系の英文が中心です。この大学を第一志望にしながら医系単語帳を主軸に据えると、時間の使い方がずれます。
私立でも同じことが起きます。杏林大学医学部の英語は、60分の全マーク形式でありながら医療テーマがほぼ出ない、という特徴で知られています。
医療テーマが出ないなら、時間は標準的な長文の処理速度と、文法・語法の精度に振り向けるべきです。


「易しい」と「差がつかない」は別の話です
新潟大学の英語は全学部共通の標準的な出題で、90分という時間にも比較的余裕があります。それでも医学科の合格には7割から7.5割が必要になります。難問がない試験で7割5分を取るのは、難問がある試験で6割を取るより難しいことがあります。
北海道大学も同様で、全学部共通問題のため医学部専用の難問はなく、だからこそ取りこぼしが命取りになります。90分で大問4題、1題600語から800語を捌く処理量が問われます。
この型で必要なのは、難問への対応力ではありません。標準問題を落とさない精度と、時間内に全部に手をつける処理速度です。


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医学科独自型は「難しいが満点は要らない」
単科の医科大学は、そもそも医学部しかありません。旭川医科大学、札幌医科大学、福島県立医科大学、浜松医科大学、滋賀医科大学、京都府立医科大学、和歌山県立医科大学などがこれに当たります。私立の医科大学も同様です。
こうした大学では、英語の英文そのものが医療・生命科学寄りになりやすくなります。医系の語彙、医療倫理や公衆衛生のトピック、医師と患者のやりとり。読む素材の性質が最初から違います。
独自型で求められるのは記述の型です
医学科だけを相手にした試験は、記述の比重が高くなる傾向があります。和訳、内容説明、要約、自由英作文。採点者が医学科の答案だけを読むので、書かせる設問を置きやすいのです。
この型では、単語を知っているかどうかより、知っている内容を日本語または英語で正確に書けるかどうかで差がつきます。読めているのに書けない受験生が、ここで落ちます。
合格ラインは共通型より低いのが普通です
難易度が上がるぶん、合格ラインは下がります。6割から7割で通る大学が珍しくありません。ここを勘違いして満点を目指すと、1題に時間をかけすぎて後半を落とします。
自分の志望校で「何点取れば通るのか」を先に決めてください。目標点が決まらないと、捨てる設問も決まりません。


見落とされやすい「混在型」
やっかいなのが3つ目です。1つの試験の中に、他学部共通の大問と医学科専用の大問が混ざっている大学があります。
島根大学の英語がその代表です。120分の大問5題のうち、大問1・2・4は他学部との共通問題で、大問3と大問5-Bが医学科専用とされています。大問3は医療テーマの長文、大問5-Bは和文英訳です。
つまりこの大学では、同じ試験の中で「標準的な共通問題を確実に取る」ことと「医療テーマの長文と重い和文英訳を書き切る」ことの両方が要求されます。
大阪大学も、和文英訳の大問で全学部共通の問題と学部によって分かれる問題が置かれる形になっています。
混在型の見分け方
過去問を開いて、大問ごとに次の2点を見てください。
- 英文のテーマが医療・生命科学に寄っているか
- その大問だけ設問形式が他と違うか(急に記述量が増える、日本語で書かせる、など)
この2つが同時に当てはまる大問があれば、そこが医学科専用である可能性が高くなります。赤本の解説に「医学科のみ」と注記されていることもあります。


志望校のタイプを15分で判定する3ステップ


ステップ1 募集要項で試験の実施単位を見る(5分)
大学の募集要項で、個別学力検査の科目一覧を開きます。見るのは1点だけです。英語の試験が学部ごとに分かれているか、大学全体で1つになっているか。
単科の医科大学なら、この時点で医学科独自型が確定します。総合大学なら次へ進みます。
ステップ2 過去問3年分のテーマを数える(5分)
赤本を開き、大問ごとに英文のテーマを一言で書き出します。3年分なら12題から15題になります。
このうち医療・生命科学のテーマが何題あるかを数えてください。3年で1題以下なら共通型、半分以上なら独自型、特定の大問だけに集中しているなら混在型です。
ステップ3 目標得点率を決める(5分)
タイプが決まったら、目標点を先に決めます。共通型なら8割前後、独自型なら6割5分から7割が出発点です。過去の合格最低点が公表されているなら、そこから逆算してください。
この目標点が、当日どの設問を捨てるかの基準になります。決めずに本番へ行くと、全部を取りにいって全部が中途半端になります。
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共通型と判定されたなら、必要なのは医系語彙ではなく標準問題の精度です。文法・構文の穴を単元単位で埋め直すのが近道になります。抜けている単元の講義だけを拾って戻る使い方ができる教材は、この用途に向いています。
タイプ別に、勉強の中身を変える
判定が終わったら、次の表のとおりに配分を変えてください。
| 項目 | 全学部共通型 | 医学科独自型 | 混在型 |
|---|---|---|---|
| 医系単語 | 優先度は低い。共通テスト後に薄く | 早期から必須。テーマ別に回す | 独自の大問の分野だけ |
| 標準長文の量 | 最優先。処理速度を上げる | 標準量でよい | 最優先 |
| 記述の練習 | 志望校に出る形式だけ | 最優先。答案を人の目に通す | 独自の大問の形式を重点 |
| 目標得点率 | 8割前後 | 6割5分から7割 | 大問ごとに設定 |
| 過去問の使い方 | 他学部の過去問も演習に使える | 医学科の過去問に絞る | 共通の大問は他学部分も使える |
共通型なら、他学部の過去問が使えます
これは実務的に大きな利点です。全学部共通問題なら、同じ大学の他学部の受験生が解いた問題は、そのまま自分の演習素材になります。過去問の在庫が実質的に増えます。
医学科独自型ではこれができません。使える過去問は医学科の分だけなので、遡れる年数に限りがあります。


併願校とタイプが違うと、準備が二重になります
第一志望が独自型、併願校が共通型という組み合わせは、必要な準備が重なりません。医系語彙を積み上げながら、標準問題の処理速度も上げる。時間が足りなくなります。
出願校を決める段階で、タイプを揃えられるかを一度検討してください。揃えられないなら、配点の大きいほうに寄せる判断が要ります。


AIに判定を手伝わせる
タイプ判定は、材料さえ揃えば機械的な作業です。テーマの分類と集計はAIに任せて構いません。
テーマを分類させる
「これから、私が志望校の過去問3年分について、大問ごとに英文のテーマを書き出したメモを貼ります。(貼る)各テーマを、医療・生命科学、社会・経済、科学技術、人文・文化、その他の5つに分類し、分類ごとの件数を表にしてください。判断に迷うものは、迷った理由を1行で書いてください」
自分で数えると、医療っぽく見える英文を医療テーマに数えがちです。第三者に分類させると偏りが減ります。
タイプを判定させる
「次は、ある大学の医学部英語について私が調べた情報です。(貼る)この大学の英語が、全学部共通問題型、医学科独自型、両者の混在型のどれに当たるかを判定してください。判定の根拠を箇条書きで示し、情報が足りない場合はどの資料を確認すべきかを書いてください。推測で断定しないでください」
断定を禁じる一文を必ず入れてください。入れないと、根拠のないタイプ判定が返ってきます。
学習配分を出させる
「私の志望校の英語は〇〇型です。試験時間は〇分、大問は〇題、記述の比重は〇です。目標得点率は〇割です。残り〇日で、医系語彙、標準長文、記述練習、文法の4つに時間をどう配分すべきかを、割合と1週間の型で示してください。理由は各1行にしてください」
配分を数字で出させるのがコツです。「バランスよく」といった答えを避けられます。
医系語彙の要否を判断させる
「以下は志望校の過去問3年分の英文テーマの一覧です。(貼る)この大学の対策として、医療・生命科学の専門語彙を優先的に覚える必要があるかどうかを判定してください。必要と判断した場合は、どの分野の語彙かを3つまで挙げてください。不要と判断した場合は、代わりに優先すべき学習項目を挙げてください」
医系単語帳を1冊買う前に、この判定を挟んでください。買ってから気づくと、その時間は戻りません。
他学部の過去問が使えるかを確認させる
「志望校の英語は全学部共通問題です。同じ大学の他学部の過去問を演習素材として使う場合の注意点を挙げてください。とくに、学部によって解答する大問が分かれる可能性について指摘してください」
大阪大学のように、一部の大問だけ学部によって分かれる大学があります。共通だと思い込んで解き進める前に確認してください。


まとめ
医学部の英語は一枚岩ではありません。志望校が誰と同じ問題を解く試験なのかで、やるべきことが変わります。
押さえるべきことは4つです。
第一に、3タイプがあること。他学部と同じ問題を解く全学部共通型、医学科だけの医学科独自型、1つの試験に両方が混ざる混在型。島根大学のように、大問1・2・4が他学部共通で大問3と5-Bが医学科専用という大学もあります。
第二に、共通型は取りこぼしが命取りだということ。問題は標準的でも、医学科の合格ラインは高くなります。北海道大学や新潟大学のように、難問がないからこそ8割前後を要求される試験があります。
第三に、独自型は満点が要らないということ。医療テーマと重い記述で難易度は上がりますが、合格ラインは6割から7割に下がります。捨てる設問を先に決めてください。
第四に、タイプによって医系単語の優先度が変わること。鳥取大学のように他学部共通で医療テーマがほぼ出ない大学もあります。医系単語帳を買う前に、志望校の過去問3年分でテーマを数えてください。
今日やることは1つです。赤本を開いて、直近3年分の大問ごとにテーマを書き出し、医療系が何題あるかを数える。15分で、今の勉強の優先順位が正しいかどうかが分かります。
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混在型の大学が第一志望で、共通の大問と医学科専用の大問の両方に手を打つ必要があるなら、独学での配分調整は難しくなります。志望校の形式に合わせて演習量を組み替えてもらえる環境を検討する価値があります。全寮制・完全個別カリキュラムの選択肢です。
出題の実施単位(学部共通か学科独自か)や大問構成は、年度によって変更されます。本記事で触れた大学の形式も、必ず志望校の最新の募集要項と直近の過去問で確認してください。
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