「獣医は英語が命」。獣医志望の受験生から何度も聞いた言葉です。動物や生命科学の英文が出るから語彙を固めろ、という指導もよく見かけます。しかし国公立の獣医10校を配点で並べ直すと、話はまったく違って見えます。二次試験に英語がない大学が3校あり、出願区分の選び方ひとつで英語の配点が200点から400点に倍増する大学もある。つまり「獣医の英語」という単一の対策は存在しません。志望校がどのタイプかで、英語に割くべき時間は2倍ずれます。本記事は、国公立獣医10校を二次の英語の扱いで3タイプに分類し、タイプ別に何をどれだけやるかを配点から逆算します。
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国公立獣医10校は、英語の扱いで3タイプに分かれる

まず全体像です。獣医学科を設置する国公立は10校。この10校を、前期日程の個別学力検査における英語の扱いで分けると、次の3つになります。
| タイプ | 大学 | 二次の英語 |
|---|---|---|
| A 必答型 | 北海道・帯広畜産・東京農工・鳥取・大阪公立 | 全員が解く |
| B 区分・選択型 | 鹿児島・宮崎 | 選び方で重さが変わる |
| C 英語なし型 | 岩手・岐阜・山口 | 課されない |
5校対2校対3校。半分の大学では全員が二次で英語を解きますが、残り半分は事情が違います。この分類を知らずに「獣医だから英語」と決め打ちすると、時間の配分を大きく間違えます。
なお入試科目と配点は毎年変わります。ここに挙げた内容は傾向を示すためのもので、出願にあたっては必ず各大学が公表する最新の学生募集要項で確認してください。
タイプA 必答型の5校
北海道大学、帯広畜産大学、東京農工大学、鳥取大学、大阪公立大学。この5校は全員が二次で英語を解きます。
北海道大学の獣医学部は、前期の個別試験450点が数学150点、英語150点、化学75点、生物75点という構成とされています。英語150点は数学と同額で、理科2科目の合計とも同額です。しかも面接の配点がありません。学科の点数だけで決まる大学です。
帯広畜産大学は少し変わっています。前期の個別試験は総合問題450点で、英語・物理・化学・生物・数学の5科目から3科目を解答する形式とされていますが、英語は全員必答で、残り4科目から2科目を選ぶ設計です。選択科目に見えて、英語だけは選択の対象外というわけです。

東京農工大学は処理速度の試験です。英語は60分で大問3題、総語数はおよそ1900語。難単語は少ないのに時間だけが厳しい形式で、さらに後期日程は英語1科目400点で合否が決まります。

大阪公立大学の獣医学部は、英語が60分で長文2題と和文英訳。同じ大学の医学部が100分であることを考えると、時間の余裕がまったく違います。
鳥取大学は英語200点。岐阜大学とのペア校ですが、入試は別々で、2025年度に岐阜が二次の英語をなくした一方、鳥取には英語が残りました。
タイプB 区分・選択型の2校
鹿児島大学と宮崎大学は、受験生の選び方で英語の重さが変わります。
鹿児島大学の共同獣医学部は、同じ前期日程に「前期a」と「前期b」の2区分があります。前期aは共通テスト920点に個別600点、前期bは共通テスト460点に個別1200点とされています。二次の英語は前期aで200点、前期bで400点。同じ大学の同じ日程なのに、英語の配点が倍違います。
宮崎大学の農学部獣医学科は、個別学力検査が数学・理科・外国語から2科目選択です。英語は必須ではありません。選べば総合の約29パーセント、選ばなければ約14パーセント。自分で英語の重さを決められる構造です。
このタイプで最も重要なのは、勉強を始める前に区分と科目を決めることです。決めないまま準備すると、両方に備えることになり、結果としてどちらにも足りません。
タイプC 英語なし型の3校
岩手大学、岐阜大学、山口大学。この3校は前期の個別学力検査に英語がありません。
岩手大学の共同獣医学科は二次が数学と理科で400点、岐阜大学の共同獣医学科は2025年度から数学と理科の2教科になり英語が課されなくなったとされています。山口大学の共同獣医学部も二次は数学200点と理科200点で、英語は共通テストの外国語300点に含まれるかたちです。
ここで誤解してほしくないのは、英語が要らないという意味ではないことです。二次で書かないだけで、共通テストの英語は全員が受けます。むしろ二次で挽回できないぶん、共通テストの英語の1点が重くなります。
Gou獣医志望の生徒に最初に聞くのは「志望校はどのタイプ?」です。答えられない場合、たいてい英語の勉強量が志望校とずれています。20年やってきて、これが最ももったいない失点でした。
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英語の重さは、大学を変えると2倍動く
タイプ分けの次にやることは、志望校での英語の比率を数字にすることです。感覚ではなく、割り算をしてください。
総合点に占める英語の比率を出す
計算式は単純です。共通テストの英語配点と二次の英語配点を足し、総合の満点で割る。それだけです。
たとえば北海道大学なら、共通テスト315点のうち英語の配点と、二次450点のうち英語150点を足して、765点で割ります。山口大学なら、共通テストの外国語300点を総合の満点で割る。この数字が、あなたが英語に割くべき時間の目安になります。
比率が3割に近ければ、英語は主要科目です。1割台なら、英語に時間を使いすぎている可能性があります。宮崎大学で英語を選ばない選択をした場合の約14パーセントが、後者の典型です。
共通テストの重みも大学ごとに違う
二次だけを見ていると判断を誤ります。共通テスト側の設計にも差があるからです。
北海道大学は共通テストのリスニングが圧縮されず、リーディングと1対1の比率になるとされています。帯広畜産大学も共通テストでリスニングが48点分あり、獣医系としては異例の重さです。リスニングを後回しにしてきた受験生には、この2校は相性が悪くなります。
大阪公立大学は共通テストで英語が理科の2倍という配点構造です。二次の60分だけを見ていると、この重さを見落とします。
同じ大学でも区分で倍変わる
鹿児島大学の前期aと前期bは、英語の得意不得意で有利さが逆転します。
英語が武器なら、二次の英語が400点ある前期bで差をつけられます。共通テストで思うように取れなかった場合も、共通テストの比率が低い前期bのほうが挽回の余地があります。逆に共通テストで安定して取れるタイプなら、共通テスト920点の前期aが向きます。
この判断は、共通テストの自己採点が出てからでは間に合いません。秋のうちに、模試の結果から自分がどちらのタイプかを決めておいてください。
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獣医は志望校で必要な科目が変わります。必要な単元だけを講義単位で拾えるので、要らない科目に時間を取られません。
タイプ別に、やることを決める


分類ができたら、あとは作業を割り当てるだけです。タイプごとにやることは明確に違います。
タイプAは記述の手を止めない
必答型の5校を狙うなら、和文英訳と自由英作文の練習を継続してください。鹿児島や鳥取のように和文英訳が出る大学、大阪公立のように長文と英作文を60分で処理させる大学では、書く作業の速度がそのまま点になります。
東京農工大学のような処理速度型なら、話は変わります。1900語を60分で処理するには、精読の速度ではなく「戻らない読み方」が要ります。1文ずつ和訳する癖が残っていると、まず間に合いません。
同じタイプAでも、和文英訳型と処理速度型では練習が違うということです。志望校の過去問を1年分見れば、どちらかはすぐ分かります。
タイプCは共通テストに全振りする
二次に英語がない3校が本命なら、英語の勉強は共通テスト対策と同義です。記述の練習に時間を使う必要はありません。
やるべきは、リーディングの処理速度とリスニングの精度です。二次で挽回できないぶん、共通テストで取りこぼした点はそのまま失点として残ります。過去問と予想問題を回し、時間内に最後まで届く形を作ってください。
そのぶん浮いた時間は、数学と理科に回します。岩手・岐阜・山口はいずれも二次が数学と理科の2教科400点です。ここが勝負の場所になります。
併願にAとCを混ぜるときは注意する
最も危険なのが、タイプAとタイプCを併願することです。片方は記述の英語が要り、もう片方は数学と理科に集中したい。準備の方向が真逆になります。
どうしても混ぜるなら、優先順位を先に決めてください。第一志望がAなら記述を軸にして、Cは共通テストの得点で押し切る。第一志望がCなら数学と理科を軸にして、Aは共通テストと最低限の記述で受ける。両方に全力を配ろうとすると、どちらも中途半端になります。



併願の相談で一番多いのが「どちらも捨てたくない」です。気持ちは分かりますが、配点表を見れば答えは出ます。捨てるのではなく、比率を決めるだけの話です。
私立との併願も配点で決める
国公立と私立を併願する場合、私立側は形式がまた違います。私立獣医6大学は英語が全校で必須で、しかも形式の幅が広い。国公立の準備がそのまま使えるとは限りません。


AIで獣医の英語を準備する
獣医の英語には、市販教材が少ないという固有の問題があります。医学部向けの教材はあっても、獣医向けの長文教材はほとんど市販されていません。ここはAIで作れます。
志望校のタイプを判定させる
まず分類から始めます。募集要項の科目と配点を貼り付けて、次のように指示します。
「次の入試科目と配点をもとに、総合点に占める英語の比率を計算してください。共通テストと二次のそれぞれの英語配点、合計、そして総合の満点に対する百分率を表にしてください。計算過程も示してください」
計算過程を出させるのがポイントです。配点表は圧縮や傾斜がかかっていることが多く、単純な足し算にならない大学があります。
志望校の形式に合わせた長文を生成させる
獣医の長文は動物や生命科学のテーマが出やすい一方、一般テーマも混ざります。両方の練習が要ります。
「大学入試レベルの英文を600語程度で作ってください。テーマは人獣共通感染症です。専門語には説明を置かず、文末に専門語のリストと日本語訳を示してください。そのあとに内容一致問題を3問付けてください」
専門語に説明を置くかどうかを指定してください。志望校が語注を付けるタイプなら説明あり、付けないタイプなら説明なしで作らせると、本番に近い負荷になります。
和文英訳を採点させる
タイプAの大学を狙うなら、和文英訳の添削が要ります。
「あなたは国公立獣医学部の採点者です。次の和文英訳を採点し、減点箇所を列挙してください。それぞれ何点減点かと理由を示し、模範解答は最後に1つだけ出してください。文法の誤りと、日本語の意味を取り違えた箇所を分けて指摘してください」
文法の誤りと意味の取り違えを分けさせるのが重要です。この2つは対処法がまったく違います。
読む速度を測らせる
東京農工大学のような処理速度型を受けるなら、自分の読解速度を数字で知る必要があります。
「次の英文の語数を数え、私が読み終えるまでにかかった時間から1分あたりの語数を計算してください。そのうえで、60分で1900語を読んで設問に答えるために必要な速度と比較し、不足分を示してください」
必要な速度から逆算すると、あと何割上げればいいかが分かります。感覚で「速く読む」と決めるより、はるかに実行しやすくなります。
国公立獣医学部の英語 まとめ
国公立獣医10校を、二次の英語の扱いで整理しました。
- タイプA 必答型は北海道・帯広畜産・東京農工・鳥取・大阪公立の5校。全員が二次で英語を解き、配点も重い
- タイプB 区分・選択型は鹿児島と宮崎。鹿児島は前期aと前期bで英語が200点と400点、宮崎は英語を選ぶかどうかで比率が約29パーセントと約14パーセントに分かれる
- タイプC 英語なし型は岩手・岐阜・山口の3校。二次は数学と理科のみで、英語は共通テストで完結する
- タイプAでも和文英訳型と処理速度型で練習が違う。過去問を1年分見れば判別できる
- 併願にAとCを混ぜるときは、先に優先順位を決める。両方に全力は配れない
「獣医は英語が命」という一般論は、半分の大学にしか当てはまりません。まずは志望校の募集要項を開いて、二次に英語があるかどうかと、総合点に占める英語の比率を計算してください。作業は10分で終わり、そのあとの数か月の使い方が変わります。
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