「後期は小論文と面接だから、英語は関係ない」。夏の面談でこの言葉を聞くたびに、私は志望校の一覧を開いてもらいます。たしかに後期日程の多くは小論文と面接だけです。しかし例外があります。山梨大学、奈良県立医科大学、千葉大学。この3校は後期の二次で英語の学科試験を課すとされています。そして厄介なのは、この3校が後期全体の募集人員のちょうど半分を占めていることです。校数で見れば3対10の少数派なのに、人数で見れば五分。つまり「後期は英語が要らない」という言い方は、確率としては半分外れています。本記事は、後期を実施する13校を英語の有無で二分し、どちらを狙うかで冬の英語の使い方がどう変わるかを整理します。
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国公立医学部の後期日程は13校まで減った

後期日程を語るとき、最初に押さえるべきは「そもそもどこが実施しているか」です。10年前の情報で話をすると、志望校が存在しないという事故が起きます。
実施校と募集人員
2027年度入試で後期日程を実施する医学科は、次の13校とされています。
| 大学 | 後期の募集人員 | 二次に英語の学科試験 |
|---|---|---|
| 秋田大学 | 25名 | なし |
| 千葉大学 | 15名 | あり |
| 東京科学大学 | 10名 | なし |
| 福井大学 | 25名 | なし |
| 山梨大学 | 90名 | あり |
| 浜松医科大学 | 14名 | なし |
| 名古屋大学 | 5名 | なし |
| 三重大学 | 10名 | なし |
| 山口大学 | 10名 | なし |
| 宮崎大学 | 15名 | なし |
| 鹿児島大学 | 19名 | なし |
| 琉球大学 | 23名 | なし |
| 奈良県立医科大学 | 53名 | あり |
合計は314名。このうち山梨90名、奈良県立医科53名、千葉15名の158名が「英語あり」の枠です。全体の約50パーセント。校数の少数派が、人数では多数派と同じ重さを持っています。
廃止の流れが続いている
旭川医科大学、山形大学、佐賀大学は後期日程を取りやめたとされています。後期の枠は年々細っており、来年も同じ13校である保証はありません。
ここで大事なのは、廃止された大学を志望していた場合、その分の受験機会が単純に消えるということです。前期で1校、後期で1校という2回の勝負を前提に計画を立てていると、出願の段階で計画が崩れます。
募集人員と実施の有無は毎年変わります。本記事の数字は傾向をつかむためのものとして読み、出願にあたっては必ず各大学が公表する最新の学生募集要項で確認してください。
Gou後期の情報は、前期ほど熱心に語られません。だからこそ「知っているだけ」で差がつく領域です。20年見てきて、後期で受かった生徒に共通しているのは、12月の時点で後期の要項を印刷して机に貼っていたことでした。
後期の二次で英語を書くのは3校だけ
英語ありの3校は、それぞれ性格がまったく違います。同じ「英語あり」でも、要求される力が別物です。
山梨大学は後期しかない
山梨大学の医学科は前期日程を実施せず、後期日程での募集が中心という構造になっています。募集90名は後期全体で最大です。
配点は、共通テストが英語200・国語200・数学200・地歴公民100・理科200・情報100の1000点、二次が英語600・数学600・理科1000・面接100の2300点とされています。二次の比重が圧倒的に高く、英語600点は共通テスト英語200点の3倍です。
後期だから軽い、という発想がまったく通用しない大学です。むしろ二次重視型の前期と同じ準備が要ります。山梨を後期の本命に置くなら、記述の手を止めてはいけません。


奈良県立医科大学は前期と後期が反転している
奈良県立医科大学は、後期を語るうえで最も特殊な大学です。前期日程では個別学力検査に学科試験がなく、後期日程で英語・数学・理科の学科試験が課されるとされています。
配点も独特です。共通テスト900点を3分の1に圧縮して300点とし、個別学力検査を900点満点とする構成が公表されています。つまり共通テストで多少沈んでも、後期の学科試験で挽回できる設計です。
ここに気づいていない受験生が毎年います。共通テストの結果を見て「後期は無理だ」と判断してしまうのですが、共通テストの重みが3分の1に圧縮される大学では、その判断が早すぎることがあります。募集53名は後期で2番目の規模です。
千葉大学は前期に近い形式で問う
千葉大学の後期日程は、二次が英語・数学・理科と面接で構成され、配点合計1000点、共通テストが475点とされています。こちらも二次重視です。
千葉大学の英語は全学部共通問題で、自由英作文や和文英訳が出ない代わりに読解の分量で押してくる形式です。前期の対策がそのまま後期に効くタイプなので、前期千葉・後期千葉という組み方をする受験生もいます。


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残り10校の英語は、共通テストで決まっている
英語の学科試験がない10校を「英語が関係ない大学」だと考えると、対策の方向を間違えます。学科試験がないぶん、共通テストの英語の得点がそのまま合否に直結するからです。
小論文・面接型の配点構造
英語なしの10校は、二次が小論文と面接、あるいは面接のみという構成です。判明している範囲では次のようになっています。
| 大学 | 二次の内容 | 二次配点 | 共通テスト配点 |
|---|---|---|---|
| 秋田大学 | 小論文・面接 | 300点 | 750点 |
| 東京科学大学 | 小論文・面接 | 200点 | 500点 |
| 福井大学 | 小論文・面接 | 220点 | 500点 |
| 名古屋大学 | 面接 | ー | 950点 |
| 山口大学 | 小論文300・面接200 | 500点 | 950点 |
| 宮崎大学 | 面接 | 150点 | 1000点 |
| 鹿児島大学 | 小論文・面接 | 320点 | 925点 |
| 琉球大学 | 小論文100・面接200 | 300点 | 共テ英語1.5倍 |
共通テストの比重を見てください。名古屋大学は共通テスト950点に対して二次は面接のみ。宮崎大学は共通テスト1000点に対して二次150点。この配点では、共通テストの1点が二次の数点分の重さを持ちます。
つまり英語なしの後期を狙うということは、共通テスト英語のリーディングとリスニングを取り切るということです。学科試験がないぶん、逃げ場もありません。
琉球大学は共通テストの英語に傾斜がかかる
琉球大学の後期は、二次が小論文100点と面接200点の300点のみですが、共通テストの英語が1.5倍の300点に換算されるとされています。
これは「英語なし」の分類のなかで最も英語が重い大学ということになります。二次で英語を書かないのに、英語の得点力が最も直接的に効く。この構造を知らずに「琉球は小論文と面接だから」と考えると、判断を誤ります。


小論文の中に英語が混ざることもある
もう1つ注意点があります。医系小論文では、英語の資料や英文の引用を題材にする出題が行われることがあります。英語の学科試験がなくても、英文を読む力が問われる可能性は残ります。
過去問を確認するとき、科目名だけで判断せず、実際に出題された資料の種類まで見てください。「小論文」という科目名の中身が、英文要約に近いという大学もあります。
前期と後期を1本の準備で走らせる


後期の準備で最も多い失敗は、共通テストが終わってから後期を考え始めることです。それでは遅い。理由は日程にあります。
動ける日数は思っているより少ない
前期の合格発表は3月上旬、後期の試験は3月12日前後です。前期の結果を見てから後期の対策を始めると、実質的に動ける日数は数日しかありません。
しかも前期の発表を待つ2週間は、精神的に最も勉強が手につかない期間です。ここで「後期は受かってから考える」と決めてしまうと、後期の答案は準備なしで書くことになります。
後期の設計は12月に済ませてください。出願校を前期と後期でセットにして決め、後期で英語が要るのか要らないのかを紙に書いておく。それだけで冬の勉強の優先順位が変わります。
後期用の教材を新たに買わない
12月以降に後期用の問題集を買い足すのは、ほぼ確実に失敗します。新しい教材は、1周目で必ず知らない知識に出会い、そこで時間を吸い取られるからです。
英語ありの3校を狙うなら、前期で使ってきた記述の教材をそのまま回してください。山梨も奈良県立医科も千葉も、要求される力は前期の二次と同じ「読んで、正確に日本語または英語で書く」力です。特別な形式のために新しい訓練が要るわけではありません。
共通テスト後の5日で形式に寄せる
共通テストが終わって自己採点をした直後、後期の候補が現実的になった時点で5日間だけ形式合わせをします。
やることは3つです。志望校の過去問を時間を計って1年分解く。止まった場所を記録する。止まった形式だけを潰す。点数は記録しません。3月の時点で点数を見ても、伸ばす時間がないからです。
見るべきは「最後の設問まで手が届いたか」「どこで時間を使いすぎたか」「見直しに何分残せたか」の3点。この記録があれば、当日の時間配分が決まります。



後期で受かる生徒は、後期のために特別なことをしていません。前期と同じ勉強を、前期の発表の前後で止めなかっただけです。逆に言えば、止めた瞬間に後期の可能性は消えます。
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AIで後期特有の準備をする
後期日程には、市販の対策本がほとんど存在しません。過去問の解説も前期に比べて薄い。この空白はAIで埋められます。
志望校の後期の出題形式を1枚に整理させる
まず情報の整理から始めます。手元にある過去問や募集要項の情報を貼り付けて、次のように指示します。
「次の情報をもとに、この大学の後期日程の英語について、試験時間・大問数・設問形式・記述の分量を表にまとめてください。情報が不足している項目は推測せず、不明と書いてください」
推測を禁止する一文が重要です。これを入れないと、AIは一般的な傾向で空欄を埋めてしまいます。後期のように情報が少ない領域では、埋められた嘘が最も危険です。
英語ありの3校向けに記述を添削させる
山梨・奈良県立医科・千葉を狙うなら、記述の練習を止めないことが最優先です。添削の相手がいない時期こそAIが効きます。
「あなたは国公立医学部の採点者です。次の英文和訳を、部分点の観点から採点してください。減点箇所を列挙し、それぞれ何点減点かと、その理由を示してください。模範解答は最後に1つだけ出してください」
模範解答を最後に回させるのがコツです。先に正解を見ると、自分の答案のどこが崩れていたかを考えなくなります。
英語なし10校向けに共通テストの弱点を絞らせる
英語の学科試験がない大学が本命なら、やるべきは共通テスト英語の精度上げです。
「次は共通テスト英語リーディングの自己採点結果です。失点した設問の番号と、その設問の形式を対応させ、どの形式で最も失っているかを特定してください。そのうえで、残り1か月で優先すべき形式を3つだけ挙げてください」
優先を3つに絞らせる指示が効きます。数を制限しないと、AIは全項目を並べた総花的な計画を返してきます。
国公立医学部の後期日程と英語 まとめ
国公立医学部の後期日程と英語の関係を、構造で整理しました。
- 後期を実施するのは13校。旭川医科・山形・佐賀が取りやめ、枠は細り続けている
- 二次で英語の学科試験があるのは山梨・奈良県立医科・千葉の3校。ただし後期の募集人員314名のうち158名がこの3校で、確率としては半分
- 山梨は二次2300点中の英語600点、奈良県立医科は前期に学科試験がなく後期の個別900点で問う、千葉は前期に近い形式で1000点
- 残り10校は小論文・面接型。英語の学科試験はないが、共通テストの比重が高く、琉球は共テ英語が1.5倍になるとされる
- 後期の設計は12月に終える。共通テスト後に始めると、動ける日数が数日しか残らない
「後期は英語が関係ない」という一文で片づけずに、志望校の要項を開いて英語の有無を確認してください。確認に必要な時間は10分です。その10分が、3月にもう1回勝負できるかどうかを決めます。
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