秋は模試が連続します。記述模試、共通テスト模試、大学別模試。返ってくるのは偏差値と、AからEの判定です。そして多くの受験生が、その判定を見て一喜一憂し、英語の答案をファイルに挟んで終わります。ここに大きな取りこぼしがあります。医学部志望者の場合、そもそも自分の志望校に合わせた模試が存在しないケースがほとんどで、返ってきた英語の点数は志望校の配点でも形式でもありません。判定をそのまま信じることにも、無視することにも意味がないのです。本記事は、汎用の模試を志望校仕様に読み替える手順を整理します。
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志望校別模試は、ほとんどの医学部にありません

大学別の模試、いわゆる冠模試は、河合塾の入試オープンと駿台の入試実戦模試が代表です。2026年度に実施される対象大学は、東京大学、京都大学、東北大学、名古屋大学、大阪大学、北海道大学、九州大学、神戸大学、東京科学大学、一橋大学、そして駿台側には早稲田大学と慶應義塾大学が加わります。
このうち医学科を置いているのは9校ほどです。医学科のある大学は全国に81校(防衛医科大学校を含めると82校)あります。つまり9割近くの医学部志望者には、志望校の形式で解ける模試が存在しません。
「医学部専用模試」も基本的にありません
大手2社の全国模試には、医学部志望者だけを対象にした専用回はありません。駿台全国模試は難関大志望者が多く受けるため母集団のレベルは高くなりますが、問題そのものは医学部専用に作られたものではありません。
冠模試がある9校にしても、出題は全学部共通です。医学科だけ英語の問題が違う、ということはありません。違うのは合格ラインだけです。
Gou「模試でE判定でした」と落ち込む生徒に答案を見せてもらうと、失点の半分が志望校では出題されない形式だった、ということが毎年あります。判定の前に、その失点が本番で起きる失点なのかを確かめてください。
汎用模試の英語は、志望校の英語ではありません
河合塾の全統記述模試は、英語が100分200点です。出題は例年、リスニングまたは中文空所補充の選択、文法・語法、総合問題2題、英作文という構成になっています。駿台全国模試も英語は100分200点です。
一方、医学部の英語は大学によって60分から120分、配点は100点から300点超まで幅があります。設問の形式も、全問マークシートの大学から、和訳と要約で埋まる大学まで別物です。


秋から共通テストまでの模試カレンダー
2026年度の主な模試日程は次の通りです。日程は変更されることがあるので、申込前に各予備校の公式サイトで確認してください。
| 実施日 | 模試 | 英語の形式 |
|---|---|---|
| 9月27日 | 第2回 駿台全国模試 | 記述・論述 100分200点 |
| 10月4日 | 第3回 全統記述模試(河合塾) | 記述・論述 100分200点 |
| 10月11日 | 第2回 駿台・ベネッセ記述模試 | 記述 |
| 10月18日 | 第3回 全統共通テスト模試(河合塾) | 共通テスト型 |
| 10月18日から11月22日 | 大学別入試実戦模試(駿台)・大学別入試オープン(河合塾) | 各大学の過去問形式 |
| 11月1日 | 第3回 駿台・ベネッセ共通テスト模試 | 共通テスト型 |
| 11月15日 | 全統プレ共通テスト(河合塾) | 共通テスト型 |
| 12月6日 | 駿台atama+プレ共通テスト | 共通テスト型 |
全部受ける必要はありません
10月から12月にかけて、受けようと思えば8回以上受けられます。しかし模試は1回で半日から1日が消えます。復習まで含めると、8回受ければ2週間近くが模試に吸われる計算になります。
国公立医学部志望なら、共通テスト型を3回、記述型を2回、志望校の冠模試があれば1回。この6回で十分です。私立専願なら共通テスト型は1回か2回に減らし、記述型を軸にしてください。
受ける模試より、返却後の3時間が重要です
模試の価値は、受けた瞬間ではなく返却後に決まります。成績表が返るのはおおむね3週間から5週間後です。第2回駿台全国模試なら10月31日にWEB返却が予定されています。
返却されたら、判定を見る前にやることがあります。次の章の内訳作業です。所要時間はおよそ3時間。これをやらないなら、その模試は受けない方が時間を有効に使えます。
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✅ 模試を志望校仕様に読み替える3ステップとAI読み替えプロンプト5種
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判定より先に、英語の失点内訳を見てください
判定の意味を先に確認しておきます。河合塾の合格可能性評価は、A判定が合格可能性80パーセント以上、B判定が65パーセント、C判定が50パーセント、D判定が35パーセント、E判定が20パーセント以下の5段階です。
この数字は志望校を書いた集団の中での相対評価です。医学部の場合、母集団が本番と大きくずれることがあります。冠模試のない大学では、受験者数が数十人規模になることも珍しくありません。
判定を「参考」に格下げする条件
次のどれかに当てはまるなら、判定は参考程度に扱ってください。
- 志望校の入試科目と模試の科目構成がずれている(面接や小論文の配点が大きい大学など)
- 志望校の英語の形式が模試と大きく違う(全問マークシート、和訳中心など)
- 同じ志望校を書いた受験者が少ない
- 共通テストの比率が高い大学なのに、記述模試単独の判定を見ている
とくに4つ目は要注意です。国公立医学部は共通テストの比重が大きい大学が多く、記述模試だけの判定は本番の合否とかけ離れます。共通テスト模試と記述模試を合算するドッキング判定を見てください。
英語の失点は設問形式ごとに分けます
英語の得点だけを見ても、次に何をすべきかは決まりません。大問ごとではなく、設問形式ごとに分けてください。
| 形式 | 配点 | 失点 | 志望校で出るか |
|---|---|---|---|
| 長文の内容一致 | 出る/出ない | ||
| 下線部和訳 | 出る/出ない | ||
| 内容説明(日本語記述) | 出る/出ない | ||
| 文法・語法 | 出る/出ない | ||
| 英作文 | 出る/出ない | ||
| リスニング | 出る/出ない |
右端の列が本記事の要点です。志望校で出ない形式の失点は、その模試の判定を下げてはいますが、本番の得点には影響しません。


汎用模試を志望校仕様に読み替える3ステップ


返ってきた成績表を、志望校の入試に翻訳します。所要時間は3時間。1回やれば型ができるので、2回目からは1時間で終わります。
ステップ1 出る形式と出ない形式に仕分ける(60分)
まず志望校の英語の出題形式を、過去問3年分から書き出します。設問の種類と、それぞれの配点です。配点が公表されていない大学が多いので、設問数から按分して構いません。
次に模試の答案を並べ、設問ごとに「志望校で出る」「出ない」を振り分けます。ここで自由英作文が出ない大学を志望しているのに英作文で30点落としていたなら、その30点は本番の失点ではありません。
自由英作文が出題されない医学部は少なくありません。志望校が該当するかどうかを、まず確認してください。


ステップ2 出る形式だけで再採点する(60分)
「出る」に振り分けた設問だけを合計し、その中での得点率を出します。仮に模試の英語が200点満点で120点(60パーセント)でも、志望校で出る形式だけに絞ると150点中105点(70パーセント)になることがあります。逆に下がることもあります。
この数字が、志望校に対する現在地です。偏差値ではなくこの得点率を、志望校の目標得点率と比べてください。
ステップ3 志望校の英語比率を掛ける(60分)
得点率が出たら、志望校の合計点に占める英語の比率を掛けます。英語の比率が15パーセントの大学と、35パーセントの大学では、同じ「英語が10パーセント足りない」の重みがまったく違います。
比率が低い大学なら、英語を伸ばすより理科を固める方が総合点は動きます。比率が高い大学なら逆です。この判断は、秋のこの時期にしかできません。年明けからでは科目の配分を変える時間がありません。


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模試の英語を、志望校の問題に作り替える
冠模試がない受験生には、もう一段やれることがあります。模試で使われた英文を、志望校の設問形式に作り替えて解き直す方法です。
模試の本文は、その年に予備校が総力を挙げて選んだ質の高い英文です。1回解いて捨てるのはもったいない。設問だけを差し替えれば、志望校形式の演習素材になります。
和訳が出る大学を志望している場合
模試の長文から、構造の複雑な文を3つ選び、下線部和訳として自分で訳します。模範解答がないので、訳の正誤はAIか先生に見てもらってください。
要約が出る大学を志望している場合
模試の長文を、志望校と同じ字数で要約します。70字と300字では書き方が別物なので、必ず志望校の字数に合わせてください。
全問マークシートの大学を志望している場合
模試の記述問題を、自分で選択肢4つの問題に作り替えます。誤答の作り方を考える作業が、そのまま選択肢を切る力になります。


AIに模試を読み替えさせる
3ステップの作業は、慣れるまで時間がかかります。仕分けと計算はAIに任せて構いません。
出る形式と出ない形式を仕分けさせる
「これから2つの情報を貼ります。1つ目は私が受けた模試の英語の設問一覧と配点と私の得点、2つ目は志望校の過去問3年分の設問一覧です。模試の各設問について、志望校で出題される形式かどうかを判定し、出る形式だけを合計した得点率を計算してください。判断に迷う設問は、断定せず要確認と書いてください」
判断の根拠を書かせるのがコツです。根拠なしで断定させると、出る形式を取りこぼします。
志望校の配点比率を計算させる
「次の情報は、私が募集要項から書き写した志望校の共通テストと二次試験の科目と配点です。(貼る)合計点に占める英語の比率をパーセントで計算してください。共通テストと二次を分けた比率と、合算の比率の両方を出してください。書かれていない項目は推測せず、要確認と書いてください」
配点は必ず自分で募集要項から取ってください。AIの記憶に入っている配点は古いことがあります。
記述答案を採点させる
「以下は模試の英作文(または和訳)の設問と、私の答案です。志望校の採点基準は不明なので、一般的な大学入試の基準で採点し、減点箇所を1つずつ指摘してください。減点の理由は、文法・語法の誤り、内容の欠落、日本語としての不自然さ、のどれに当たるかを分類してください。模範解答を先に出さないでください」
模範解答を先に出させると、自分で直す作業が消えます。この一文の有無で学習効果が変わります。
志望校形式の設問を作らせる
「以下は模試で出題された英語長文の本文です。この本文に対して、次の形式の設問を作ってください。(志望校の形式を書く。例: 70字の日本語要約1問、下線部和訳2問、内容一致4択を3問)解答と、根拠となる本文の箇所は最後にまとめて示してください」
冠模試の代わりになるのがこの作業です。素材は模試、設問は志望校形式。これで演習の中身が本番に近づきます。
復習の優先順位を決めさせる
「次は私の模試の英語の失点内訳です。(貼る)志望校の英語比率は〇パーセント、目標得点率は〇パーセントです。残り〇日で、どの形式から手をつけるべきかを優先順に3つだけ挙げてください。理由は各1行にしてください」
優先順位を3つに絞らせるのが重要です。上限を指定しないと、全部やれという答えが返ってきます。


まとめ
医学部志望者にとって、模試は「志望校の予行演習」ではありません。読み替えて初めて使える素材です。
押さえるべきことは4つです。
第一に、大学別模試があるのは9校ほどで、医学科のある81校の1割強にすぎないこと。残りの受験生は、汎用模試を自分で翻訳する必要があります。
第二に、模試は全部受けないこと。国公立志望なら共通テスト型3回、記述型2回、冠模試があれば1回。受ける回数より、返却後の3時間を確保するほうが重要です。
第三に、判定より先に英語の失点内訳を見ること。志望校で出ない形式の失点は、判定を下げていても本番の失点ではありません。国公立志望なら記述模試単独ではなくドッキング判定を見てください。
第四に、読み替えを3ステップで行うこと。出る形式と出ない形式に仕分ける、出る形式だけで再採点する、志望校の英語比率を掛ける。この3時間で、年内に英語へどれだけ時間を割くべきかが決まります。
次に返ってくる成績表が届いたら、判定を見る前に設問形式ごとの失点表を作ってください。1時間で、見える景色が変わります。
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模試の日程・科目・配点、および各大学の出題形式と配点は毎年更新されます。本記事の日程は2026年度の予定であり、必ず各予備校の公式サイトと志望校の最新の募集要項で確認してください。
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