「過去問を10年分解きました」と言う受験生の英語が伸びていない、という場面をこれまで何度も見てきました。解いた量は十分なのに点が動かない。原因はほぼ一つで、復習です。丸つけをして解説を読んで終わり、という5分の作業を復習と呼んでいる限り、1題から取り出せる情報のほとんどを捨てていることになります。しかも復習の型は志望校によって変わります。全問マークシートの愛知医科大学と、記述が主戦場の京都大学では、同じ復習をしても効きません。本記事は、長文1題を90分で回す4段階の手順と、失点を3種類に分ける方法を整理します。
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解きっぱなしが最大の失点です

長文1題にかける時間の目安は、解く45分に対して復習45分です。合計90分。この配分を聞くと、たいていの受験生は「そんなに時間がない」と言います。
しかし本当に足りていないのは時間ではなく、1題あたりの回収率です。
「何年分解いたか」は指標になりません
過去問の年数は、勉強量の指標として使われがちですが、点数とはほとんど相関しません。10年分を丸つけだけで通過した人より、3年分を4段階で回した人のほうが伸びます。
理由は単純で、長文1題には、構文・語彙・設問処理・時間配分という4つの学習材料が同時に詰まっているからです。丸つけだけでは、このうち設問処理の一部しか回収できません。
Gou「1週間で長文を5題やりました」と報告してくれる生徒には、まず「そのうち1題を選んで、本文の要旨を日本語で30秒話して」と言います。話せないことがほとんどです。5題を浅くやるより、1題を深く回すほうが点は動きます。
復習する題材は絞ってください
全部の問題を丁寧に復習しようとすると、必ず途中で破綻します。週に長文3題を解いたなら、深く回すのは1題で構いません。
選ぶ基準は「一番できなかった題材」ではなく「志望校の形式に一番近い題材」です。関西医科大学のように1000語超の長文が出る大学を志望しているのに、500語の題材を深く復習しても、本番の負荷とはずれます。


長文1題を4段階で回す


復習の45分は、次の4段階に割り振ります。順番を入れ替えないでください。
段階1 失点を分類する(15分)
間違えた設問を、後述する3つの型に振り分けます。設問番号だけを書き、原因は一言で済ませます。ここを丁寧にやりすぎると続きません。
段階2 詰まった文の構造を取る(15分)
読めなかった箇所の英文だけを抜き出します。1題につき最大5文。それ以上は選びません。
主節の主語と動詞に印をつけ、接続詞・関係詞・カンマで区切り、前から意味のかたまりごとに日本語を当てる。最後に全体の訳を書きます。解説訳と食い違ったら、どの区切りで食い違ったのかを特定してください。訳文そのものを覚えても次に使えません。
段階3 語彙を回収する(10分)
知らなかった語を全部拾うと、単語カードだけが増えて回らなくなります。優先順を決めてください。
| 優先度 | 拾う語 |
|---|---|
| 第1 | 設問の正誤に直接からんだ語 |
| 第2 | 本文で2回以上出てきた語 |
| 第3 | 医療・生命科学の頻出語 |
| 拾わない | 固有名詞、注つきの専門用語、1回しか出ず設問にも無関係な語 |
拾った語は、単語だけでなく本文の1文ごと書き写します。文脈から切り離した単語は、本番で引き出せません。


段階4 音読する(5から10分)
音読は、意味が取れた文だけを対象にします。まだ意味の取れない文を唱えても、読む速度は上がりません。
1回目は区切りごとに止まってよいので意味を確認しながら、2回目は止まらずに、3回目は本番の読解速度で読みます。3回目のあとに「何の話だったか」を日本語で30秒話せれば成功です。話せないなら、回数を増やしても変わりません。
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失点は3種類。打ち手がまったく違う
復習が効かない最大の理由は、原因の違う失点を同じやり方で処理していることです。間違いは3つに分かれます。
型A 読めなかった
該当箇所を読み直しても日本語にできない。主語と動詞が特定できない。単語が分からず文意が取れない。
打ち手は構文と語彙です。設問の解説を読み込んでも意味がありません。土台が抜けているので、そこを埋めるのが先になります。
型B 読めたのに選べなかった
該当箇所は日本語にできる。それでも選択肢を切れなかった、あるいは逆を選んだ。記述なら、書くべき要素を落とした。
打ち手は設問処理です。正解の選択肢が本文のどの表現の言い換えになっているかを、語単位で対応させてください。医学部の内容一致問題では、本文の表現をそのまま使わずに言い換えるのが定番です。この対応づけを毎回やると、切る基準が安定します。
型C 時間が足りなかった
最後の大問に到達していない。見直しがゼロだった。後半の正答率だけが極端に低い。
打ち手は解く順番と、1題あたりの上限時間の設定です。読解速度そのものの問題とは限りません。難しい設問に粘りすぎて時間を溶かしているケースが多く、この場合は速読の練習をしても改善しません。



型の取り違えが一番多いのは、Aだと思っていた失点が実はBだったというパターンです。「単語が分からなかった」と言う生徒に本文を訳してもらうと、実は訳せている。選択肢の言い換えが見抜けなかっただけ、ということがよくあります。




志望校の解答形式で復習の重みが変わる
同じ4段階でも、どこに時間を寄せるかは志望校で変わります。基準になるのは解答形式です。
| 形式 | 主戦場 | 復習の重点 |
|---|---|---|
| 全問マークシート | 型B | 選択肢と本文の言い換えを語単位で対応づける |
| 記述中心 | 減点の再現 | 要素の数・主語の一貫性・時制・字数を自分で点検してから外の目を通す |
| 併用型 | 配点の大きいほう | マークは自分で、記述は外の目で。切り分けを先に決める |
マークシート型は自己採点が効きます
愛知医科大学のように全問マークシートの大学では、自分の答案の正誤がその場で分かります。復習は型Bに全振りして構いません。
このとき「正解だった問題」も見てください。当てずっぽうで合った問題を放置すると、本番で同じ設問が落ちます。根拠を本文の何行目かで言えなければ、間違えた扱いにします。


記述型は自分では採点できません
京都大学のように記述が主戦場の大学では、自分の答案が何点になるかを自分で判定できません。だからこそ、採点者の目に近づける手順を復習に組み込む必要があります。
書いた答案に対して、必要な要素が入っているか、主語が一貫しているか、時制が原文と合っているか、字数に収まっているか。この4点を自分で点検してから、第三者かAIの目を通します。


スタディサプリ 大学受験講座
型Aの失点が半分を超えるなら、復習だけでは埋まりません。詰まる単元(関係詞・分詞構文・比較あたりが定番です)の講義だけを拾って戻るのが早い方法です。単元単位で視聴できる教材は、この戻り先として使いやすくなります。
1題を3回に分けて回す
当日にまとめて復習して終わり、では1週間後に消えています。同じ1題を3回に分けてください。
当日(90分)
本番と同じ時間で解いたあと、4段階を45分。ここで型の内訳を数えます。型Aが何問、型Bが何問、型Cが何問。この数字が、次に何をすべきかを決めます。
翌日(15分)
前日と同じ本文を音読3回。そして前日に回収した語彙のテストです。英語を見て日本語を言えるかだけを確認します。
新しい題材には手を出さないでください。15分で終わる作業なので、朝の支度前でも入ります。
1週間後(10分)
本文は読まずに、設問だけを解き直します。正解の根拠を本文の何行目かで言えるかを見ます。
ここで同じ間違いをしたら、失点の分類が外れています。型Aだと思っていたものが実は型Bだった、という取り違えが最も多いパターンです。分類をやり直してください。
1か月後(任意・45分)
同じ大問を時間を計って通しで解きます。読解速度が上がっているかを見るための計測で、点数そのものは気にしなくて構いません。関西医科大学のように1000語超の長文が出る大学と、そうでない大学とでは、目指す速度そのものが違います。他人の基準ではなく、自分の現在地を測ってください。


AIに復習を手伝わせる
復習は、一人でやると必ず甘くなります。特に記述の答案と、選択肢を切った根拠。ここはAIに突っ込ませると精度が上がります。
失点を分類させる
「これから、私が間違えた英語長文の設問と、なぜ間違えたと思うかのメモを貼ります。それぞれを(A)本文が読めていない(B)本文は読めたが設問処理を誤った(C)時間不足、の3つに分類し、型ごとの件数を出してください。理由は1行、対策の提案は最後に3行だけにしてください」
自己申告の分類は甘くなりがちです。第三者に振り分けさせると、型Bが想像より多いことに気づきます。
訳を先に出させない
「以下の英文について、主節の主語と動詞、従属節の範囲、修飾関係を図示してください。日本語訳は最後に1つだけ示し、先に構造の説明をしてください。私が自分で訳せるように、訳を先に出さないでください」
訳を先に出させると、自分で構造を取る作業が消えます。この一文を入れるかどうかで、学習効果がまったく変わります。
語彙を優先順に絞らせる
「以下は英語長文の本文です。この中から、大学入試レベルで覚える価値のある語だけを20語に絞って抜き出してください。固有名詞と、注がついている専門用語は除外してください。各語について、本文中の1文をそのまま添えてください」
語数の上限と除外条件を指定しないと、専門用語まで大量に出てきます。
選択肢の言い換えを突き止めさせる
「以下は英語長文の設問と選択肢、そして本文の該当箇所です。正解の選択肢が本文のどの表現の言い換えになっているかを、語単位で対応させて示してください。誤答については、本文のどこと食い違うかを1行で指摘してください」
型Bの失点に対する最も効く処理がこれです。言い換えのパターンは大学ごとに癖があるので、10題も対応づければ見えてきます。
1週間後の解き直し用に設問を作らせる
「以下の英語長文について、内容一致問題を4問作ってください。条件は、本文の表現をそのまま使わず言い換えること、選択肢は4つで、誤答は本文の一部だけが食い違うものにすることです。解答と根拠となる行は最後にまとめて示してください」
1週間後の解き直しでは、元の設問を覚えてしまっていることがあります。同じ本文で新しい設問を作らせると、記憶ではなく読解で解くことになります。




まとめ
医学部英語の復習は、解いた量ではなく1題からの回収率で決まります。
押さえるべきことは4つです。
第一に、解く時間と同じだけ復習に使うこと。長文1題なら解く45分と復習45分で90分です。「10年分解いた」は勉強量の指標になりません。
第二に、復習を4段階に分けること。失点の分類15分、詰まった文の構造15分、語彙の回収10分、音読5から10分。順番を入れ替えないでください。構造を取る前に音読しても、意味の取れない文を唱えるだけになります。
第三に、失点を3種類に分けること。読めなかった型A、読めたのに選べなかった型B、時間切れの型C。打ち手がそれぞれ構文と語彙、設問処理、時間設計と別物です。取り違えたまま復習しても点は動きません。
第四に、志望校の解答形式で重みを変えること。全問マークシートの愛知医科大学なら型Bに全振りできます。記述が主戦場の京都大学なら、減点の再現に時間を寄せる必要があります。
今日解いた長文を1題選んで、間違えた設問を3つの型に振り分けるところから始めてください。15分で終わります。そこで、次に何をすべきかが決まります。
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