併願校の選び方として語られるのは、たいてい偏差値と日程と地理的条件です。この3つで受験校は決まりますが、決まらないものが一つあります。英語の準備量です。第一志望が100分の全問記述なのに、併願校が80分の全問マークだったとしたら、同じ勉強では戦えません。1月になって「マークの練習をしていない」と気づく受験生を、これまで何人も見てきました。防ぐ方法は単純で、出願前に候補校の英語を3つの軸で測っておくことです。1校あたり15分で終わります。本記事は、その3軸と、相性を判定する手順を整理します。
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英語の準備コストは3軸で決まる

日程と偏差値は「受けられるかどうか」を決めます。しかし「どれだけ準備が要るか」を決めるのは、次の3軸です。
| 軸 | 見るもの | 何が変わるか |
|---|---|---|
| 軸1 解答形式 | 全問マーク/全問記述/併用 | 答案を自分で採点できるか、練習で何を鍛えるか |
| 軸2 語数と時間 | 長文の語数、試験時間、1題に使える分数 | 必要な読解速度 |
| 軸3 書く設問 | 自由英作文・和文英訳・和訳・日本語記述の有無 | 準備量がゼロか最大かに分かれる |
この3軸のうち2軸が一致していれば、準備の大半は共有できます。1軸以下なら、その大学専用の対策時間を別に確保する必要があります。
Gou「併願校はどこがいいですか」と聞かれたとき、私はまず第一志望の英語の3軸を聞きます。そこが分からないと、相性の話ができないからです。偏差値表だけを見て決めた併願は、たいてい1月に破綻します。
同じ偏差値帯でも形式は別物です
難易度の指標と、形式の距離はまったく別のものです。同じ難易度帯の中に、100分の全問記述の大学と、80分の全問マークの大学が並んでいます。
産業医科大学の英語は100分・大問4題で、解答形式はすべて記述です。大問1から3が長文読解、大問4が100語程度の自由英作文で、大問3では150から200字程度で説明する記述問題も出るとされています。
一方、愛知医科大学の英語は80分・大問7題で全問マークシートです。記述問題は含まれません。
この2校を同じ「私立医学部」としてひとくくりにすると、準備を誤ります。




3軸の測り方
過去問を1年分開いて、3行だけ埋めます。本文を読む必要はありません。設問と時間割を見るだけです。
軸1 解答形式は解答欄で分かる
マークシートなら全問マーク、罫線だけなら全問記述、両方あれば併用です。ここは30秒で判定できます。
私立医学部で最も多いのは併用型です。聖マリアンナ医科大学は90分・大問3題で、記述とマークの併用とされています。大問1が記述の説明問題中心の読解、大問2が選択式のみの読解、という構成です。
「私立は全部マークシート」というのは誤解で、この思い込みのまま出願すると、記述の準備がないまま本番を迎えることになります。


軸2 語数と時間は割り算で出す
長文の語数は概算で構いません。英文の中ほどの3行で1行あたりの語数を数え、平均を出して全体の行数を掛けます。
次に、試験時間から知識問題と記述にかける時間を引き、残りを長文の題数で割ります。これが1題に使える分数です。語数を分数で割れば、必要な読解速度が出ます。
同じ900語でも、10分しか使えない大学と20分使える大学では、必要な速度が倍違います。語数だけを見ても足りません。


軸3 書く設問は設問文を探すだけ
「英語で書け」「英訳せよ」「和訳せよ」「日本語で説明せよ」という指示があるかを探します。本文は読まなくて構いません。
大阪医科薬科大学の英語は80分・大問3題で、近年は設問形式が和訳や説明問題中心から、空所補充や内容一致選択といった一般的な形式へ変化したとされています。記述量は減りましたが、英文和訳や和文英訳は依然として出題されており、ここで差がつきやすいとも指摘されています。
つまり「記述が減った」という情報だけで、書く設問がなくなったと判断してはいけません。3年より古い情報で準備しないでください。


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準備が二重になりやすい3つの組み合わせ
相性が悪い組み合わせには、はっきりした型があります。
全問記述の第一志望と、全問マークの併願校
最も多い失敗です。記述の練習を積んでいる受験生が、併願校では選択肢を素早く切る処理速度を問われます。求められる能力が別物なので、勉強してきた分がそのままでは効きません。
打ち手はシンプルです。併願校の過去問を12月までに2年分だけ通しで解き、時間内に終わるかを確認します。終わるなら追加対策は不要です。終わらないなら、解く順番だけを決めておきます。
長文が短い第一志望と、1000語超の併願校
必要な読解速度が数倍変わります。そして速度は数週間では上がりません。
関西医科大学のように、1000語を超える長文が1題は出るとされている大学があります。こういう大学を併願に入れるなら、練習の題材は語数の多い側に合わせてください。速い側に合わせれば遅い側は自動的に間に合いますが、逆は成立しません。
書く設問がない第一志望と、自由英作文がある併願校
自由英作文はゼロから積むと最も時間のかかる領域です。1校のためだけに英作文を立ち上げるのは、投資として重くなります。
判断材料は配点です。英作文の配点が全体の1割未満なら、捨てて他で取るという判断も成立します。全体の3割を占めるなら、受けると決めた時点で対策は必須になります。




時間の圧が近い大学は組みやすい
軸2には、語数と速度のほかにもう一つ、試験の構造そのものという要素があります。
昭和医科大学の1次試験は、英語が大問3題で、試験時間が数学または国語と合わせて140分とされています。科目ごとに時間が区切られていないため、自分で配分を決める必要があります。これは他の大学にはあまりない構造です。
こういう独特な構造を持つ大学は、それ自体が独立した準備を要します。併願に入れるなら「形式が近いから楽」という理由ではなく、その構造に慣れる時間を別に見積もってください。
藤田医科大学のような併用型は橋渡しになる
藤田医科大学の英語は90分・大問6題で、マークと記述のハイブリッド形式です。
こうした併用型は、全問マークの大学とも全問記述の大学とも、部分的に一致します。第一志望がどちらであっても、準備の一部が共有できるという意味で、併願に組み込みやすい位置にあります。




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出願前にやる3ステップ


出願の時期までに、次の3つを順番に済ませてください。
ステップ1 第一志望を3軸で書き出す
まず基準を作ります。第一志望の英語について、解答形式、語数と時間、書く設問の3行を書きます。過去問1年分があれば15分で終わります。
ここが曖昧なままだと、候補校との距離が測れません。順番を飛ばさないでください。
ステップ2 候補校を同じ3軸で並べる
候補は5校以上出してください。同じ3行を、同じ書き方で埋めます。
このとき、情報が取れない項目は「要確認」と書いて空欄のままにします。推測で埋めると、判定そのものが狂います。
ステップ3 2軸以上が一致する大学を優先する
一致した軸の数を校ごとに数え、多い順に並べます。
3軸すべて一致なら準備は完全に共有できます。2軸一致なら大半が共有でき、残り1軸だけを追加で埋めれば足ります。ここが実用的な合格ラインです。1軸以下なら、専用の対策時間を別枠で見積もったうえで出願を判断してください。
日程の調整は、このあとで構いません。形式で絞ってから日程を見るほうが、結果として受験校の数を減らせます。



相性が良いというのは「受かりやすい」という意味ではありません。準備コストの話です。同じ勉強時間で複数校を狙えるようになる、という意味で受け取ってください。
AIに形式を比較させる
3軸の情報を集めたあとの整理は、AIに任せると速くなります。ただし条件が一つあります。
推測で埋めさせない
「これから、私が調べた大学の英語入試の情報を貼ります。それぞれについて(1)解答形式が全問マーク・全問記述・併用のどれか(2)試験時間と大問数と長文の語数(3)書く設問の有無と種類、の3軸に整理した表を作ってください。情報が不足している項目は『要確認』と書いてください。推測で埋めないでください」
最後の一文が最重要です。これがないと、それらしい数字が入ってきます。入試情報は必ず自分で過去問と募集要項から取り、AIには整理だけをさせてください。
一致度を数えさせる
「以下は第一志望と併願候補5校の3軸情報です。第一志望との一致軸数を校ごとに数え、多い順に並べてください。一致しなかった軸については、追加で必要になる対策を1行で書いてください」
人間がやると「行きたい大学」に判定が引っ張られます。数を数えるだけの作業は外に出したほうが客観的です。
共通して効く学習項目を絞らせる
「以下は私が受ける6校の英語の3軸情報です。6校すべてに共通して効く学習項目と、1校だけにしか効かない学習項目を分けて挙げてください。共通項目を優先度順に並べてください」
秋以降の時間配分は、この「共通項目」から埋めるのが最も効率的です。1校だけにしか効かない項目は、後回しにするか、切る判断をします。
直前期の配分案を出させる
「以下は私の受験校と試験日程、各校の英語の3軸情報です。共通テスト後から各試験日までの期間で、どの校の対策にどれだけ時間を配分すべきかの案を出してください。形式が近い大学はまとめて扱ってください」
形式が近い大学をまとめて扱わせるのが要点です。校ごとにバラバラの計画を立てると、直前期に破綻します。


まとめ
医学部の併願は、偏差値と日程で受験校を決めたあと、英語の形式でもう一度点検してください。
押さえるべきことは4つです。
第一に、準備量を決めるのは形式の距離であること。日程と偏差値は「受けられるか」を決めますが、「どれだけ準備が要るか」は決めません。
第二に、測るのは3軸であること。解答形式、語数と時間、書く設問。過去問1年分があれば1校15分で埋まります。2軸以上が一致すれば準備の大半は共有できます。
第三に、同じ私立でも形式は別物であること。産業医科大学は100分・大問4題の全問記述で自由英作文が100語程度、愛知医科大学は80分・大問7題の全問マークです。ひとくくりにすると準備を誤ります。
第四に、二重になる組み合わせを自覚して受けること。記述型とマーク型、短い長文と1000語超、書く設問のあり・なし。この3つが典型です。受けてはいけないという話ではなく、専用の時間を別枠で見積もるという話です。
今日やることは1つだけです。第一志望の過去問を1年分開いて、3軸を書き出してください。15分で終わります。基準ができれば、候補校との距離はそのあと機械的に測れます。
入試情報と出題形式は毎年更新されます。本記事で触れた大学の形式も、必ず最新の募集要項と過去問で確認してください。
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