私立医学部の共通テスト利用選抜には、一般選抜とは違う顔があります。二次試験が面接だけの大学があり、そこでは学科の勝負が共通テストの得点だけで決着します。さらに杏林大学と東海大学のように、英語または国語のどちらかを選べる大学まであります。制度上、英語を使わずに出願する道が存在するということです。ところが実際に配点を計算すると、共通テスト利用の英語比率は22.2%から33.3%。国公立の一般選抜が10.8%から30.8%であることを考えると、むしろ英語から逃げにくい設計になっています。そしてボーダー得点率は85%から90%。「面接だけだから楽」という話ではありません。本記事は、出願先を決める前に確認すべき点を配点から整理します。
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二次試験は4タイプに分かれる

共通テスト利用と一口に言っても、二次試験の中身は大学によってまったく違います。まず4タイプのどれかを確認してください。
| タイプ | 二次の内容 | 該当例 |
|---|---|---|
| A | 面接のみ | 東北医科薬科、愛知医科、藤田医科、関西医科、福岡大 |
| B | 小論文と面接 | 埼玉医科、国際医療福祉、杏林、順天堂、東京医科、北里、聖マリアンナ、東海、大阪医科薬科、近畿 |
| C | 二次に英語がある | 帝京(英語[読解]・課題作文・面接) |
| D | 共通テスト利用を実施していない | 慶應義塾、自治医科、獨協医科 など |
タイプAは共テの得点がそのまま合否になる
面接のみの大学では、学科試験も小論文もありません。共通テストの得点だけで学科の勝負がつきます。
二次形式の記述対策は不要ですが、その分だけ共通テストの精度が求められます。当日の英語1回の出来が、他の試験でならされることなく反映されるということです。
タイプCに注意
帝京大学は共通テスト利用でありながら、二次で英語(読解)と課題作文、面接が課されるとされています。
「共通テスト利用だから学科はない」と思い込んで出願すると、二次で英語の試験に直面します。志望校がどのタイプかを最初に確認してください。

英語の配点比率は22.2%から33.3%
一次試験の満点と英語の配点から、英語比率を計算しました。
| 大学 | 一次満点 | 英語配点 | 英語比率 | 二次 |
|---|---|---|---|---|
| 杏林大学 | 600点 | 200点(英語または国語) | 33.3% | 小論文・面接 |
| 東海大学 | 600点 | 200点(英語または国語) | 33.3% | 小論文・面接 |
| 北里大学 | 500点 | 150点 | 30.0% | 小論文・面接 |
| 愛知医科大学 | 700点 | 200点 | 28.6% | 面接のみ |
| 大阪医科薬科大学 | 700点 | 200点 | 28.6% | 小論文・面接 |
| 福岡大学 | 700点 | 200点 | 28.6% | 面接のみ |
| 東北医科薬科大学 | 710点 | 200点 | 28.2% | 面接のみ |
| 聖マリアンナ医科大学 | 710点 | 200点 | 28.2% | 小論文・面接 |
| 藤田医科大学 | 750点 | 200点 | 26.7% | 面接のみ |
| 埼玉医科大学 | 650点 | 150点 | 23.1% | 小論文・面接 |
| 国際医療福祉大学 | 650点 | 150点 | 23.1% | 小論文・面接 |
| 順天堂大学 | 900点 | 200点 | 22.2% | 小論文・面接 |
| 東京医科大学 | 900点 | 200点 | 22.2% | 小論文・面接 |
関西医科大学は600点から800点、帝京大学と近畿大学は300点から500点と、方式によって満点が変わるとされています。
配点は改定されます。必ず志望校の当該年度の募集要項で確認してください。
国公立より英語比率が高い
ここから読み取れることがあります。共通テスト利用の英語比率は22.2%から33.3%の範囲に収まり、大学間の幅が比較的狭いのです。
国公立の一般選抜では、共通テストと二次を合わせた総合英語比率が10.8%から30.8%まで開きます。二次に英語という科目がない大学があるためです。
一方、共通テスト利用は5教科から6教科で判定され、そのうち英語が150点から200点を占めます。二次で英語以外の科目に大きな配点が振られる余地がありません。
つまり共通テスト利用を狙うなら、どの大学であっても英語は避けて通れないということです。
Gou「共テ利用は面接だけだから英語は軽い」と考える受験生がいますが、逆です。二次で他科目に配点が散らないぶん、共テ英語の1点が重くなります。比率で見れば国公立より高い水準です。
英語と国語を選択できる大学がある
杏林大学と東海大学は、英語または国語のどちらかを選択する形式とされています。
英語が苦手で国語が得意な受験生にとって、これは実質的な選択肢になります。ただし決める前に確認すべきことが3つあります。
1. 併願校でも同じ選択ができるか
英語を捨てる判断をすると、他の共通テスト利用校では出願できなくなります。前述の一覧の通り、ほとんどの大学は英語が必須です。
杏林と東海だけを受けるなら成立しますが、複数校を出願するなら英語は必要になります。




2. 一般選抜との整合
同じ大学の一般選抜では英語が課されます。共通テスト利用で国語を選び、一般選抜でも同じ大学を受けるなら、結局は英語の準備が必要です。
共通テスト利用だけに絞る戦略なのか、一般選抜も併願するのかを先に決めてください。
3. 国語の得点が本当に安定しているか
共通テストの国語は、年度による難易度変動が大きい科目です。過去3年分の自己採点を並べて、英語と国語のどちらが安定しているかを確認してから決めてください。1回の模試で判断しないことです。
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ボーダー得点率85%から90%という現実


ここまで読んで「面接だけの大学を狙えば楽ではないか」と考えたなら、次の数字を見てください。
共通テスト利用のボーダー得点率は、85%から90%に達する大学が珍しくないとされています。2026年度入試で河合塾が示した最も高いボーダー得点率は、順天堂大学と帝京大学のいずれも88%とされています。
国公立医学部と同程度、あるいはそれ以上の水準です。
なぜこれほど高いのか
理由は2つあります。1つは募集人員が少ないこと。もう1つは学科試験が課されない、あるいは軽い試験のみで判定されるため、全国の高得点層が集中しやすいことです。
学科試験がないということは、当日の逆転がないということでもあります。共通テストの結果がそのまま順位になるため、高得点層にとって計算しやすい入試になります。だから集まります。
ボーダーは年度で動く
募集人員が少ないため、年度ごとの受験者動向によってボーダーが大きく変動するとされています。前年度のボーダーをそのまま目標にすると読み違えます。
ボーダー88%の大学を狙うなら、90%を目標に置いてください。2ポイント程度の余裕は必要です。
英語で必要な得点を逆算する
ボーダー88%を仮定して、英語で何点必要かを計算してみます。
杏林大学(一次600点、英語200点、英語比率33.3%)なら、総合528点が必要です。全科目一律88%なら英語は176点。ただし科目間に得意不得意があるなら、英語で90%(180点)取って他科目の87%台を補うという設計も成り立ちます。
一方、順天堂大学(一次900点、英語200点、英語比率22.2%)では、英語で2%多く取っても総合への影響は約0.44%にとどまります。
つまり英語比率が高い大学ほど、英語での調整が効きます。逆に比率が低い大学では、英語だけで挽回するのは難しくなります。


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共通テスト利用はボーダーが85%から90%です。全科目を底上げする必要があるため、抜けのある科目を短時間で埋める講義型が向いています。
共通テスト英語の詰め方
共通テスト利用を狙うなら、リーディングとリスニングの両方を仕上げる必要があります。多くの大学が両方を合算して200点または150点としているためです。
リーディング80分の配分
目安は次の通りです。
- 第1問と第2問に合計20分
- 第3問と第4問に合計20分
- 第5問に15分
- 第6問に20分
- 見直しに5分
守るべきルールは、第1問から第3問までを40分以内に終えることです。ここで押すと、後半の長い文章に時間が回りません。
演習では得点より「第6問に取りかかった時点で残り何分あったか」を記録してください。この数字が安定すれば得点も安定します。
リスニングは毎日15分
リスニングは、まとめて勉強しても伸びにくく、間を空けると落ちやすい技能です。毎日短くが正解になります。
推奨する15分の内訳は、最初の5分で1セット解く、次の5分でスクリプトを見ながら音声を追う、最後の5分でスクリプトを見ずに聞いて聞き取れなかった箇所だけ戻る、です。
聞き取れなかった箇所は原因を3つに分けてください。音の連結(want to が wanna のように繋がる)、弱形(of, and, for, can などが極端に弱くなる)、語彙不足。最初の2つは音読で解決し、単語の問題は3つめだけです。
多くの受験生は語彙不足だと思い込んでいますが、実際は前の2つが大半です。


出願前に確認する6項目
志望校ごとに次を埋めてください。1校あたり15分で終わります。
- 二次試験のタイプ(面接のみ/小論文と面接/二次に英語あり/実施なし)
- 一次試験の満点と英語の配点、そこから計算した英語比率
- 英語が必須か、国語と選択か
- 共通テストの必要教科・科目数と、理科・数学の指定
- 前年度のボーダー得点率、募集人員、倍率
- 出願開始日と締切日
3校から5校を並べて書くと、自分にとっての優先順位が見えます。とくに2番目と5番目を並べると、「英語で調整が効く大学」と「全科目を均等に仕上げる必要がある大学」が分かれます。
なお共通テスト利用は、一般選抜との併願で受験機会を増やす制度です。共通テスト利用だけに絞る戦略はリスクが高くなります。一般選抜の対策と並行させる前提で計画してください。




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よくある5つの誤解
「共通テスト利用は面接だけだから楽」
ボーダー得点率が85%から90%に達します。学科試験がない分だけ高得点層が集中するため、むしろ厳しい戦いです。当日の逆転もありません。
「共通テスト利用なら英語は軽い」
英語比率は22.2%から33.3%で、国公立の一般選抜(10.8%から30.8%)より全体的に高い水準です。共通テスト利用こそ英語から逃げられません。
「英語と国語が選べるなら英語を捨てられる」
選択できるのは一部の大学だけです。併願するなら英語は必要になりますし、同じ大学の一般選抜を受けるなら結局英語が課されます。
「共通テスト利用はどの私立医学部でも使える」
実施していない大学があります。慶應義塾大学、自治医科大学、獨協医科大学などが該当するとされています。志望校が実施しているかを最初に確認してください。
「前年度のボーダーを目標にすればよい」
募集人員が少ないため、年度ごとの受験者動向でボーダーが大きく変動します。前年度の数字に2ポイント程度の余裕を上乗せしてください。
まとめ
私立医学部の共通テスト利用は、うまく使えば受験機会を増やせる制度です。ただし「学科試験がないから楽」という理解で出願すると、必要な得点水準の高さに足をすくわれます。
押さえるべきことは4つです。
第一に、二次試験は4タイプに分かれること。面接のみ(東北医科薬科、愛知医科、藤田医科、関西医科、福岡大)、小論文と面接(埼玉医科、国際医療福祉、杏林、順天堂、東京医科、北里、聖マリアンナ、東海、大阪医科薬科、近畿)、二次に英語がある(帝京)、そして実施していない大学(慶應義塾、自治医科、獨協医科など)。準備すべきものがまったく変わります。
第二に、英語比率は22.2%から33.3%で、国公立の一般選抜より高い水準だということ。共通テスト利用は5教科から6教科で判定され、そのうち英語が150点から200点を占めます。二次で他科目に配点が散らないぶん、共テ英語の1点が重くなります。
第三に、英語と国語を選択できる大学があること。杏林大学と東海大学が該当するとされています。ただし併願校では英語が必須になりますし、同じ大学の一般選抜を受けるなら結局英語が要ります。国語を選ぶなら、過去3年分の自己採点で安定性を確認してからにしてください。
第四に、ボーダー得点率が85%から90%に達すること。2026年度入試で河合塾が示した最高は順天堂大学と帝京大学の88%とされています。募集人員が少なく学科試験がないため、全国の高得点層が集中します。前年度のボーダーに2ポイント程度の余裕を上乗せして目標を置いてください。
英語比率が高い大学ほど、英語での調整が効きます。杏林(33.3%)なら英語で2%多く取る効果が総合で0.67%ですが、順天堂(22.2%)では約0.44%にとどまります。自分の得点構造と照らして、どの大学で英語を武器にできるかを判断してください。
配点、ボーダー、募集人員、実施の有無はいずれも改定されます。本記事の数値も、必ず志望校の公式募集要項で確認してください。




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