「要約が出るから、要約の練習をしよう」。この一言で対策を始めると、たいてい遠回りになります。医学部英語の要約は3つの型に分かれていて、型が違えば作業がまったく違うからです。東京大学の理科三類は70から80字の日本語、佐賀大学は300字の日本語、久留米大学は30語程度の英語、そして北海道大学は与えられた要約文の空所を埋める形式です。最後の型に至っては、要約の練習をしても伸びません。文法と語彙の問題だからです。本記事は、要約を3つの型に分類したうえで、字数別にどう書き分けるかを整理します。
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要約は3つの型に分かれる

当ブログで個別に調べた大学を、要約の出題形式で分類すると3つになります。
| 型 | 求められる作業 | 出題する大学 |
|---|---|---|
| 型A 日本語要約 | 指定字数の日本語に圧縮する | 東京大学(70〜80字)、聖マリアンナ医科大学(100字程度)、広島大学(段落ごと)、佐賀大学(300字程度)、慶應義塾大学 |
| 型B 英語要約 | 指定語数の英語で書き直す | 久留米大学(30語程度)、山梨大学 後期(50〜70語)、慶應義塾大学 |
| 型C 要約文の空所補充 | 与えられた要約文の空所を埋める | 北海道大学、富山大学、千葉大学、山口大学 |
Gouまず押さえてほしいのは、要約が出ない大学のほうが多いという事実です。志望校の過去問に要約がないなら、要約の参考書を買う必要はありません。その時間は和訳か英作文に回してください。
型が違えば使う脳が違う
型Aは日本語の作文技術です。英文が読めていても、日本語で削る力がなければ点になりません。
型Bは英語の運用技術です。読めていても、自分が書ける英語の構文に落とせなければ書けません。
型Cは文法と語彙の知識です。北海道大学の大問4は、読解力というより文法・語法・語彙が問われるとされています。要約の練習をいくら積んでも、ここは伸びません。
同じ「要約」という言葉でくくって同じ練習をするのが、最も多い失敗です。




型A 日本語要約は字数で書き方が変わる
日本語要約は、指定字数によって作業の性質が変わります。70字と300字を同じテンプレートで書こうとすると、必ずどちらかで崩れます。
70〜80字は「1文に圧縮する」
東京大学の第1問Aは、約300語の英文を70から80字の日本語にまとめる問題です。2025年度も2026年度も70から80字が指定されています。
この字数に入る要素は2つだけです。筆者の主張と、その根拠または対比。具体例、数値、固有名詞は全部捨てます。
削る順番を決めておくと迷いません。修飾語、具体例、接続表現、主語の重複。この順で削れば主張が最後まで残ります。


100字前後は「4要素で組む」
聖マリアンナ医科大学の大問1は、記述による説明問題が中心で、100字程度でまとめさせる設問が出されています。
100字なら、テーマ、結論、根拠、含意の4要素で組みます。1要素あたり25字が目安です。3要素で100字に届くなら、4つめは無理に足す必要はありません。


段落要約は「捨てる」ではなく「拾う」
広島大学の大問Ⅰは、約500から600語の英文を段落ごとに指定字数で要約する形式です。2021年度から、英文全体を要約する形式から段落ごとの要約に変わったとされています。
全体要約が「捨てる」作業なのに対して、段落要約は「各段落から1文ずつ拾う」作業です。トピックセンテンスに線を引き、それを指定字数の8割で日本語にし、残り2割でその段落固有の情報を足します。
最大の減点要因は、隣の段落と同じ内容を繰り返すことです。書き終えたら必ず見比べてください。


300字は「作文の設計図」を先に作る
佐賀大学の大問3は、見開き1ページ程度の長文を300字程度の日本語で要約する設問です。ここまで来ると、もはや要約ではなく作文です。
書き始める前に4ブロックに分けます。導入60字、展開1が90字、展開2が90字、結論60字。この配分を問題用紙の余白にメモしてから書き始めてください。
300字で失敗する人の共通点は、本文の前半だけで250字を使ってしまうことです。ブロックごとの字数を先に決めておけば、これは起きません。


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型B 英語要約は「訳す」と落ちる
英語要約でやってはいけないのが、本文の英語をそのまま並べることです。慶應義塾大学の英語要約では、本文の丸写しは減点対象になります。
日本語を経由してから英語にする
久留米大学の大問6は、2020年度から日本語の文章を30語程度の英語にまとめる設問と、英文を50字程度の日本語にまとめる設問が出題されています。
30語という短さでは、英語で考えながら書くと必ず溢れます。先に日本語で20字の要旨を作り、それを自分が確実に書ける構文に落としてください。
使う構文は3つで足ります。SVO、SVO that節、and や because でつないだ複文。関係詞や分詞構文で凝る必要はありません。


条件指定を1つ破ると内容が正しくても引かれる
山梨大学の後期日程では、英字新聞の記事を50から70語の英語で要約する問題が出題されるとされています。しかもそこには、番号や記号は語数に含めない、本文中の固有名詞や文献名は要約に含めない、本文にない略語は使わない、といった条件が並びます。
要約の力だけでなく、条件を読んで守る力が試されています。書き終えたら、設問に戻って条件を1つずつ照合してください。
語数管理は「1文15語 × 文数」で決める
50語なら3文、70語なら4文から5文。この換算を頭に入れておくと、書きながら語数を数える必要がなくなります。
語数不足は超過よりも重く減点されます。指定の下限は必ず超えてください。




型C 要約文の空所補充は要約の練習では伸びない
ここが本記事で最も伝えたい部分です。
北海道大学の大問4は、会話文を読んでその内容をまとめた要約文の空所を埋める形式です。試されるのは読解力というより、文法・語法・語彙の知識だとされています。空欄補充中心で答えやすいため、大問4を先に片づける時間配分が一般的だとも言われています。
富山大学は、本文の一部を指定語数の英語または指定字数の日本語で要約して空所を補充する設問が課されます。千葉大学の長文にも要約の空欄補充が含まれ、山口大学の大問1でも要約の空欄補充が頻出とされています。
処理の順番は5つ
- 空所の前後から品詞を確定する(冠詞の後は名詞、助動詞の後は動詞の原形)
- 単数か複数か、可算か不可算かを決める
- 本文の該当箇所を特定し、その言い換えを探す
- 時制が要約文全体で揃っているか確認する
- 埋め終わったら要約文を通しで読み、文法的な破綻がないか見る
正解が本文と同じ語であることは、実は多くありません。言い換えられた語が入るのが基本です。だからこそ語彙の運用力が問われます。



型Cの受験生に要約の書き方を教えても、点は動きません。必要なのは熟語と語法です。ここを取り違えたまま夏を過ごしてしまう受験生を、毎年見ています。




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型Cで落とす原因はほぼ文法と語法です。空所の品詞判定で毎回迷うなら、該当分野の講義だけを拾って戻るのが最短です。単元単位で視聴できる教材は、この戻り先として使いやすくなります。
志望校に要約があるかを3分で確認する


対策を始める前に、必ずこれをやってください。出ない大学の要約対策は、そのまま時間の損失になります。
手順1 設問の指示文だけを読む
過去問を1年分開き、本文は読まずに設問の指示文だけを拾います。「要約せよ」「要旨をまとめよ」「summarize」の語があるかを確認してください。
3分で終わります。本文を読んでしまうと1年分で60分かかるので、指示文だけにしてください。
手順2 3つの型のどれかを判定する
指定が字数(日本語)なら型A、語数(英語)なら型B、与えられた文の空所を埋めるなら型Cです。
型Aならさらに字数を見ます。70字台なのか、100字前後なのか、300字なのかで、前章のどのテンプレートを使うかが決まります。
手順3 3年分で形式が続いているか確認する
年度によって出題形式が入れ替わる大学があります。
札幌医科大学は、日本語論述の年もあれば要約や英作文が来る年もあり、形式のヤマ張りが通用しません。宮崎大学も、年度によって大問が4題になり要約が加わることがあるとされています。群馬大学に至っては、科目名は小論文でありながら、長年にわたり内容説明、要約、英文和訳、空所補充を課してきました。
3年分を見て形式が揺れているなら、「出る前提」で準備するのが安全です。


AIで要約を添削させる
要約は、独学で最も添削が得にくい設問です。自分の要約に何が足りないかは、自分では見えません。
模範解答を書かせない
AIに模範解答を出させると、読んで満足して終わります。読んでも自分では書けるようになりません。
指示はこうします。「模範解答は書かないでください。この要約に入っているべきなのに抜けている要素だけを、箇条書きで3つ以内挙げてください。あわせて、入っているが不要な要素があれば指摘してください」
抜けている要素だけを教えてもらい、自分で埋め直す往復が力になります。
字数配分を数えさせる
「以下は私が書いた300字の要約です。導入、展開、結論のそれぞれに何字使っているかを数えて示してください。配分が偏っている場合は、どのブロックを削ってどこに回すべきかを指摘してください。書き直しはしないでください」
300字の要約で崩れる原因はほぼ配分です。字数を数えさせるだけで、自分の癖が見えます。
丸写しを検出させる
英語要約なら、こう指示します。「本文と3語以上連続して一致している箇所をすべて指摘し、それぞれについて言い換えの候補を2つずつ挙げてください」
自分では気づけない丸写しが、機械的に洗い出せます。
型Cの類題を作らせる
型Cは過去問以外の演習素材がほぼ存在しません。ここはAIで無限に作れます。
「300語程度の英語の会話文と、その内容をまとめた120語程度の要約文を作ってください。要約文には空所を8つ設け、会話文の表現をそのままではなく言い換えた語が正解になるようにしてください」
言い換えを正解にする条件を必ず入れてください。入れないと本文と同じ語が答えになり、本番より易しくなります。


要約と内容説明は別物
紛らわしいのが、要約に見えて要約ではない設問です。
東京科学大学の大問6は、指定されたキーワード3つを使って本文の内容を日本語400字でまとめる問題です。字数だけ見れば佐賀大学の300字要約に近いのですが、性質が違います。指定キーワードという制約があり、それぞれが説明として機能している必要があるからです。
愛媛大学は、素材が医学・時事寄りの英文でありながら解答がすべて日本語で、60字、80字、100字、400字と字数指定の記述が並びます。これも要約というより内容説明です。
要約は、文章全体の主張を圧縮する作業です。内容説明は、指定された箇所や観点について説明する作業で、本文の他の箇所から要素を持ってくる必要があります。
練習の順番としては要約が先です。全体の構造が掴めていない状態で内容説明を書くと、字数だけ埋まって設問に答えていない答案になります。




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要約はAIで練習量を稼げますが、300字クラスの答案は人の目で見てもらう価値が残ります。記述の比重が高い国公立が第一志望なら、添削の機会を確保できる環境は検討する余地があります。
まとめ
医学部英語の要約は、全員が同じ練習をする領域ではありません。
押さえるべきことは4つです。
第一に、要約は3つの型に分かれること。指定字数の日本語で書く型A、指定語数の英語で書く型B、与えられた要約文の空所を埋める型C。東京大学は70から80字、聖マリアンナ医科大学は100字程度、広島大学は段落ごと、佐賀大学は300字程度、久留米大学は30語程度の英語、山梨大学の後期は50から70語の英語、北海道大学と富山大学と千葉大学と山口大学は空所補充です。
第二に、型Cは要約の練習では伸びないこと。北海道大学の大問4で問われるのは文法・語法・語彙だとされています。ここを取り違えると、夏を丸ごと無駄にします。
第三に、日本語要約は字数で書き方が変わること。70字は1文に圧縮する作業、100字は4要素で組む作業、段落要約は各段落から拾う作業、300字は設計図を先に作る作文です。同じテンプレートでは書けません。
第四に、要約と内容説明を混同しないこと。東京科学大学の日本語400字は指定キーワードを使う内容説明で、愛媛大学の字数指定記述も内容説明です。要約は圧縮、内容説明は再構成です。
まずは志望校の過去問を1年分開いて、設問の指示文だけを読んでください。3分で、自分に要約対策が必要かどうかが分かります。
入試情報は毎年更新されます。本記事の分類も、必ず志望校の最新の募集要項と過去問で確認してください。




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